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・文:こばやしたかし |
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・登場人(くま)物 |
クマヒロ(小学生)
お父さん(地元の企業の会社員)
お母さん(専業主婦)
他に末尾に相続関係説明図(家系図)あり |
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主治医 (かかりつけの お医者さま) | ご臨終です。
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| クマヒロ | うえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!
おじいちゃんが死んじゃったよぉーっ!
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クマヒロのことをとてもかわいがってくれていたおじいさんが、今日、おウチで家族のみんなに見守られて亡くなってしまいました。
家族といっても、お父さん、お母さん、クマヒロの3にんでしたが・・・。
おじいさんは、カゼをこじらせてしまって、1か月ぐらい布団から起き上がることができずに、そのまま亡くなってしまったのでした。
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| お母さん | そうね。おじいちゃん死んじゃったわね。
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お母さんも泣きながらクマヒロのアタマをずーっとなでました。
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| お父さん | クマヒロ君、男の子は泣いたらダメだ。
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そう言いながら、お父さんの目から涙がボロボロこぼれていました。
数日後におじいさんのお葬式がありました。
おじいさんは学校の先生でしたから、お葬式にはその教え子たちが、たくさん来てくれました。
おじいさんは長生きをしたほうでしたから、おじいさんの若い頃の教え子のなかには、自分にも孫がいるようなひとがいたそうです。
お葬式が終わって、家族だけで、おウチに帰ってきました。
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| お父さん | ああ、なんとか葬式まで終わったなー。
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| お母さん | そうねー。
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ふたりは、おじいさんが亡くなってから、お葬式の日まで、ドタバタと忙しく、ほとんど寝ていなかったようで、ぐったりしてソファーに座り込んでしまいました。
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| お父さん | これからおじいさんの荷物を、かたさないといけないなー
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| お母さん | そうねー、おじいさんは「もったいない。いつか使うかもしれない。」とかなんとか言って、なにもかも捨てないでとっておいていたから、一杯あるわねー。
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| クマヒロ | 全部捨てちゃうの?
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クマヒロは寂しそうにふたりに尋ねました。
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| お父さん | 今日のこれからすぐじゃないけれどね。
全部をいつまでもとっておくわけにもいかないし。
家もそんなに広くないから、しかたないんだよ。
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お父さんも残念そうにクマヒロにいいました。
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| クマヒロ | ねえ、ボクがおじいちゃんからもらったモノはとっておいてもいいでしょう?
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クマヒロはお父さんとお母さんに、お願いしました。
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| お母さん | そうね、それはとっておきなさい。
おじいちゃんはクマヒロ君には、たくさんいろんなものを買ってくれてたわよねー。
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| クマヒロ | うん。ボクがお願いしたら、どんなものでも買ってくれたよ。
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| お母さん | そうだったわねー。わたしはどこにそんなお金があるのかしらと思ったわよ。
それだけ、クマヒロ君のことが可愛かったのねー。
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| クマヒロ | じゃあ、とっておいていいんだね。
ボク、ずーっととっておくよ。ずーっと・・・
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クマヒロは、あふれ出てくる涙をこらえきれなくなってまた泣いてしまいました。
自分がどんなことをしても、なんでも許してくれるひとが、ひとりいなくなってしまって、そう考えると、とても悲しくなりました
その後、2か月ぐらいして、クマヒロは、お父さんとお母さんから、おじいさんが建てた、いまみんなが住んでいるお家が、本当にお父さんのものになった、と聞かされました。クマヒロは不思議におもったので、たずねました。
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| クマヒロ | どうしていまさらお家が「お父さんのものになった」なんていうの?
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| お母さん | その前に、どうしてクマヒロ君はそんなことを聞くの?
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| クマヒロ | だってこのおウチがお父さんのものになるのはアタリマエのような気がするし・・・。
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| お母さん | 実際には当たり前なんだけれど、当たり前じゃあないのよ。
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| クマヒロ | えー!?どういうこと?ちがうの?
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| お母さん | うん。「形見分け」をしないといけなかったのよ。
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| クマヒロ | カタミワケ??
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| お母さん | 「形見分け」っていうのは、亡くなったひとが残した財産を相続人のみんなで分けることなのよ。
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| お父さん | 「相続人」というのは「相続」をするひとのことだよ。
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| お母さん | ちょっとー。そのマンマじゃなーい。
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お父さんとお母さんはボケたり、ツッ込んだりできるくらい、元気になってきていました。
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| お父さん | コホン。
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お父さんは、ちょっとセキ払いをしました
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| お父さん | えーっと「相続」というのは、あるひとが死んだときに、そのひとが持っていた財産のいっさいがっさいが、プラスの財産もマイナスの財産も、お金も借金も、「相続人」のものになることを言うんだよ。
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| クマヒロ | つまりお父さんはおじいちゃんの「相続人」になるわけだねー。
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| お父さん | そうだね。死んだひとの子どもは、最優先で「相続人」になるんだね。
子どもがいない場合は「直系尊属」が相続人になるんだよ。
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| クマヒロ | チョッケイソンゾク?
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| お父さん |
「直系」というのは、上の世代は両親、祖父母、つまり、おじいさんおばあさん、下の世代は子、孫といったように、
タテの血のつながりのことを言うんだよ。
「尊属」というのは、尊敬する部類、つまり上の世代のことをいうから、「直系尊属」っていうのは、両親や祖父母のことをいうんだ。
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| クマヒロ | でもさあ、自分が自分より上の世代の人よりも先に死んでしまうっていうのは、フツーは、ないんじゃない?
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| お父さん |
うーん。確かに自分の親だとか、上の世代よりも自分が早く死んでしまうのは、フツーじゃないかもしれないね。
でも、ありえないわけじゃあないよね。
現に、クマ京のクマタロウおじさんは、ウチのおじいさんより先になくなってしまったよね。
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| クマヒロ | 確かに・・・。
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クマヒロはうなずきました。
クマタロウおじさんは、お父さんのお兄さんで、クマヒロからみると、おじさんにあたるひとでした。
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| お父さん |
それで話はもとにもどるのだけど、さらに上の世代も全部死んでしまっている場合には、兄弟姉妹が相続人になるんだね。
それと、死んだ時点でそのひとと結婚していたひと、つまり死に別れて残っているひとはかならず相続人になるんだよ。
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| クマヒロ | そうなんだねー。
そうすると、おじいちゃんの相続人は・・・。
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クマヒロはゆっくり考え始めました。
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| クマヒロ | まず、お父さんでしょ。
おばあちゃんはボクが生まれるずっと前に亡くなってしまったからちがうでしょ。
クマタロウおじさんは、もう亡くなっているからちがうでしょ。
やっぱり相続人はお父さんだけだね。
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クマヒロは自信満々にいいました。
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| お父さん | 残念だけど違うねー。
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| クマヒロ | えーっ!どうして?
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| お父さん | おじさんには、子どもがいたよね。
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| クマヒロ | うん。ボクのいとこのクマタ君のことだね。
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| お父さん | 彼も相続人にあたるんだよ。
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| クマヒロ | へー、そうなんだねー。
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クマヒロは驚いて目を丸くしました。
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| お父さん | 相続人になるべきだったひと、ウチの場合はクマタロウおじさんが、死んだひと、ウチではおじいさんだね、と同時またはそれより前に死んでいるときは、そのひとの子ども、ウチではクマタ君だけど、その子どもが相続人になるんだよ。
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| クマヒロ | ふーん。なんでそうなるの?
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| お父さん |
親の立場を受け継いでいると考えるとわかりやすいかなー。
こういったケースは「代わりに受け継ぐ」という意味で、「代襲(だいしゅう)」
って呼ばれているんだよ。
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| クマヒロ | そうなんだねー。
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クマヒロは納得してうなずきました。
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| クマヒロ | おじさんの奥さんのクマミおばさんは?
あのひとはまだ生きているよね。
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| お父さん | クマミおばさんは相続人にはならないよ。
代襲の場合は先に死んだひとと結婚していたひとは、除かれるんだよ。
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| クマヒロ | それはどうして?
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| お父さん | 死んだひととの血のつながりが薄いという発想から来ているのかなー。
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| クマヒロ | そうすると・・・。相続人はお父さんとクマタ君のふたりなんだね。
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| お父さん | うーん。まだ足りないなー。
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| クマヒロ | えー。まだいるのー?もういいよー。もったいぶらないで早くおしえてよー。
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クマヒロは口をとがらせました。
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| お父さん | あともうひとりはお母さんなんだ。
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| クマヒロ | えーッ!?
でもお母さんはおじいちゃんと血はつながっていないんじゃないの?
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クマヒロはアタマが混乱しそうになりました。
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| お父さん | 確かにそうだね。でも相続人なんだよ。
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| クマヒロ | なんでそうなるの?
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| お母さん | おじいちゃんは死ぬ前にお母さんを「養女」にしていてくれたのよ。
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| クマヒロ | ヨウジョ?
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| お父さん | そう。養女というのは女性の「養子」のことだね。
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| クマヒロ | ヨウシ?
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| お父さん |
養子というのは、養子縁組といって、結婚と同じように役所に届け出ることによって、
実の親子関係と全く同じ関係をつくってしまうことができるのだけれど、その「子ども」のがわを指している言葉だね。
ちなみに親のがわを「養親(ようしん)」とよんでいるんだよ。
ついでに言うと、いまの民法には「養女」ということばは無いんだよ。
ただ、みんな「養女」という言い方をすることに慣れているんだね。 戸籍にも「養女」と書かれている場合があったりしたようだね。
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| クマヒロ | 「ミンポー」ってナニ?
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| お父さん |
民法は、みんなが経済活動をするために、つまり食べていくために決めてある法律、つまりルールの「おおもとのもの」のことだね。
その法律のなかに、養子縁組のことも、相続のことも決められているんだよ。
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| クマヒロ | そうなんだねー。民法ってムツカシイのかなあ?
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| お父さん | いまのクマヒロ君には、まだちょっとむつかしいかもしれないなー。
だいたい大学生になってはじめて勉強するひとが大半だろうね。
それでもいまは高校生ぐらいから法律の資格を取ったりする子もいるんだよ。
そんな子はお父さんもすごいなーって感心しちゃうね。
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| クマヒロ | ふーん、そうなんだねー。
でもボクが高校生になるのはまだまだ先の話だね。
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クマヒロはちょっとホッとしたようにため息をつきました。
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| クマヒロ | でもなんでお母さんとおじいちゃんはその養子縁組をしたの?
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| お母さん | 私はおばあちゃんが亡くなってから、ずっとおじいちゃんの介護をしたりして面倒を見てきたからねー。
それで、クマヒロ君が生まれるずっと前に、おじいちゃんの相続権があるようにって養子縁組してくれたのよ。
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お母さんはなんとなく自慢げというか誇らしげです。
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| お母さん | さっきの代襲の話じゃあないけれど、お父さんがおじいちゃんより先に死んでしまったら、普通にしていたら私にはなーんにも無かったんだからー。
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| クマヒロ | そうだったんだねー。お母さんがんばったんだねー。
そうするとー・・・。おじいちゃんの相続人は、お父さん、お母さん、クマタ君の3にんというわけだね。
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| お父さん | そうだね。やっと正解にたどりついたみたいだね。
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| クマヒロ | でもそうだとすると、この家もその3にんで持つことになるんじゃないの?
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| お父さん | ウン。えーっとそれは法定相続分の発想だね。
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| クマヒロ | ホウテイソウゾクブン?
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| お父さん |
法定相続分というのは、さっき出て来た「民法」に定められている相続人の間での権利の持ち分割合、つまり取り分のことだね。
今回のウチの場合の相続人のみんなの持ち分は均等だと定められているね。
だからみんなそれぞれ3分の1ずつということだね。
でも遺産分割協議ということをすると、違った割合で相続することができるんだよ。
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| クマヒロ | イサンブンカツキョウギ?
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| お父さん |
お母さんがさっき言っていた「形見分け」の法律用語のことだね。
「遺産」は死んだひとが持っていた財産。
「分割」は分けること。
「協議」は話し合うこと。といったワケだね。
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| お母さん | そうやってこのお家がお父さんのモノになったのよ。
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| クマヒロ | そうなんだね。でも「分割」って分けることなんでしょ。
ひとりのものにするのに「分割」ってオカシクないの?
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| お父さん | ははははは。な〜るほどー。
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お父さんは大きな声で笑いました。
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| お父さん | それは法律用語の問題だよね。
法定相続分と違う割合で相続するために話し合うことを「遺産分割協議」と呼んでいるんだよ。
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| お母さん |
3にんで話し合ってこの家はお父さんのモノになったのよ。
とは言っても、クマタ君のかわりにクマミさんと話し合ったんだけどー。
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| クマヒロ | クマタ君が話し合いをしたんじゃないの?
クマミおばさんは相続人じゃあないんでしょ。
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| お父さん | クマタ君はクマヒロ君と同じで、まだ未成年者だから、家とか土地なんかの重要な財産を、どう扱うかを話し合う能力すら無いっていう具合に、これまた民法で定められているので、その彼の親のクマミさんが、お父さんやお母さんと話し合いをしたというワケだね。
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| お母さん | その話し合いをしたおかげで、お家がお父さんのものになったのよ。
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| クマヒロ | うまくまとまったというワケだね。
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| お父さん |
クマミさんは、あっさり「何もいりません。」といったなあ。
話し合いの席ではこっちは内心ビクビクしていたんだけど・・・。
おじいさんが遺言書を書いておいてくれれば良かったのにとおもったヨ。
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| クマヒロ | ユイゴンショってナニ?
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| お父さん |
遺言書というのは、生きていきているうちに「自分が死んだら、遺産はこう分けるように。」と書いておく書類のことだよ。
きちんと書かれていれば、遺産分割協議、つまり形見分けがいらないんだよ。
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| クマヒロ | その遺言書はなかったんだね。
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| お父さん |
おじいさんは、ついこの前までは元気だったからね。
自分はまだまだ大丈夫、と安心しきっていて、遺言のことまでは思いつかなかったのかもしれないね。
まあ、落ち着くべきところに落ち着いたから良かったれどね。
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| お母さん | トーゼンよ。トーゼン。お義兄さんのところはぜんぜんおじいちゃんの面倒を見てなかったんだモン。
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お母さんの声のトーンがこころなしか高くなりました。
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| お父さん | そうだったよなー。兄貴はクマ京のいい大学に行かせてもらっていたしな。
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| お母さん | そうそう。そうよ。
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| クマヒロ | なんでクマタロウおじさんは、この家に住んでいなかったの?
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| お父さん | そのクマ京の大学を卒業したあと、ここに戻ってきて、一旦地元の会社に就職したんだけれど、何か月もしないうちにやめてしまってね。「オレはクマ京で一旗あげるんだ。」とかなんとか言って、家を飛び出してしまったんだよ。
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| クマヒロ | それからどうなったの?
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| お父さん | クマ京でコンピューターの会社をおこして、結構成功したみたいなんだ。
だからとてもお金持ちになって、都心の一等地に住んでいたね。
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| クマヒロ | すごいひとだったんだねー。
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| お父さん | このウチのことはなにもしていなかったけれどね。
でも贅沢な食生活のせいなのか、ストレスのせいなのか、成人病にかかっておじいさんより早く死んでしまったなあ。
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| お母さん | どうせあそこのウチは、お義兄さんの遺産で食べていけるんでしょ。
大金持ちだから、このウチのことなんかどうでもいいのよ。
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| クマヒロ | どれぐらいのお金があるのかな?
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| お父さん | 見当がつかないなー。100億円ぐらいかな?
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| クマヒロ |
ひぇー!ひゃっ、ひゃくおくえん!?
毎日遊んで暮らせるんだろうね。
一生かかっても使い切れないんだろうねー。
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| お父さん | そうかもしれないね。
でもそれが幸せかどうかは別問題だね。
本人は早死にしてしまったしね。
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| お母さん |
そうよねー。たぶん誰かが、お父さんが、このウチのために、それとおじいちゃんのために一生懸命尽くして来ているのを見ていて、
この家をお父さんに残してくれたのね。
クマヒロ君も覚えておくのよ。
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| クマヒロ | うん。ちょっとおじさんのウチがうらやましくなるけど、でもこの先どんなことがあっても、このウチのことを覚えておいて大切にするよ。ずっと・・・。
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| お母さん | それで、お父さんが死んだら、私たちふたりで「遺産分割協議」をしましょうねー。
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| お父さん | おいおい、分けるほどの財産もないけれど、もう少し長生きさせてくれよ。
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| お母さん | やーねー。冗談よー。
まだまだ私たちを養ってもらわないといけないんだからー。
ずっと元気でいてよね。
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| クマヒロ | 元気でいてね。お父さん。
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| お父さん | くー。トホホ。生きるも地獄か・・・。
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クマヒロは大きくなってから、
クマミおばさんのウチは、
その後、クマミおばさんが、アル中(アルコール中毒の略。
お酒が手ばなせなくなる状態。)になってしまったり、ハデな外車を買いまっくったり、闇の賭け事(とばく)をして大損したり、
株(株式投資(トウシ)。
株を買うためにお金を出すこと。)や先物取引(サキモノトリヒキ。
意味はお父さんやお母さんにきいてみましょう。)に手を出してスッてしまったり、
約束手形に裏書(ウラガキ。他人の債務の連帯保証人となることとほぼ同じ、つまりお金を借りることと同じ。)
してしまったりして、スッカラカンのスッテンテンの無一文になってしまったと、親せきや、となり近所のひとたちが来る、ある集まりでの本当かウソかわからない「ひとのウワサばなし」で、聞かされることになったのでした。
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・あとがきにかえて
こんにちは、はじめまして。司法書士の小林と申します。まったくの私事で申し訳ございませんが、
自分自身がものごころついてから体験しました「相続」について書いてみたいと思います。
私の祖父・祖母にあたる人たちのうちで存命だった人たちは、私が大学の1年生から3年生までのあいだに、バタバタと亡くなってしまいました。
当時私は防大という自衛隊の学校で寮生活をしておりましたし、亡くなったのが長期休暇中というわけでもありませんでしたから、
死に目に逢うことはできませんでしたし、それ以前の見舞いにもほとんど行くことができませんでした。
それでも学校から喪中の特別休暇をいただいて、葬儀には何とかださせていただくことができました。
ですから、大学生の時分に年賀状を出したことは、ほとんどありませんでした。
今でこそ、こんな私ですが、当時は「将来は、国家防衛のためにがんばるんだ、そのために、今、勉強や訓練をしているんだ。」と、
それなりですが本気で燃えていました。
ですから、その当時は祖父や祖母に生前会えなかったことも、やむをえないことと思っていましたし、
祖父や祖母たちもそれを喜んでくれるだろう、と思っていました。
そして今、振り返りましても、その当時にそのように考えていたことというのは、ごく自然な発想だったのではないかと思えるのです。
自衛隊を退職してからすぐに、司法書士の業界に入れていただきましたが、今度は仕事と勉強に明け暮れる日々でした。
ですから、帰宅してから深夜に司法書士試験の受験勉強をしているときには、「今、親が死んだら、死に目には会えないんだなー。
早く合格しなければ・・・。」なんてことを、ふと考えたこともありました。
運よく試験に合格することができ、今現在では、お客様がたのおかげさまをもちまして、実務に明け暮れております。
父母はありがたいことに今も健在ですが、もし死に目に逢えなかったとしても、息子ががんばっていれば、
喜んでくれるのではないかなと思っております。それよりも健康に留意して、
両親より早く死ぬようなことのないようにしなければと思う今日この頃でございます。
貴重なお時間のなか、駄文におつきあいくださり、お読みいただきまして、眞にありがとうございました。
平成17年初夏の吉日
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小林崇
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・この読み本を書くことを応援してくださったかたがた。(当時)
株式会社産業コンサルタント・グループ 代表取締役 甲斐三次様
ラインシステム株式会社 代表取締役 佐藤英男様
廣木・戸越合同税務会計事務所 代表税理士 戸越一成様
ちょうどたまたま同じぐらいの時期に、「本でも書いてみたらどうかなぁー?」
というお話をしていただいていましたのが、平成16年の夏でしたから、もうすぐ1年がたとうとしています。
本当に生来かつ無類の筆不精で、シビレを切らさせてしまいましたが、やっと物語の原稿らしきものができあがりました。
こんな私に、作品をつくるきっかけや動機を与えてくださってありがとうございました。
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| 小林
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