今回は劇薬(おクスリ)のお話(処方せん)です。
どんなに壮健・頑丈・頑強なかたにでも、いつかは発生する相続。
お亡くなりになったかたの財産(プラスの財産とマイナスの財産)を誰が承継する(引き継ぐ)のか、
相続人のかた達の間で、もめ事(争族、俗に兄弟げんかなど)になることは、たいへん不幸なことでありまして、
お亡くなりになったかた(被相続人)も死んでも死に切れない(成仏できない。
私は典型的日本人的仏教徒ですので、このような言い廻しになりますのでご了承下さい。)
状況となってしまいます。
ごくごくフツーのご家庭では、遺言書を書いて、それを公正証書にしたり(公正証書遺言)して、
対策をとることが一般的に行われておりまして、それでまずは「ひと安心」と言えるでしょう。
しかし、普通のご家庭ではない、複雑なご家庭や、ばく大な財産のあるご家庭におきましては、たとえ公正証書遺言があったとしても、
モメる場合(トラブルになる場合)が多々あります。
ちなみに、たとえ遺言があったとしても、相続人の全員で遺産分割の協議をすれば、異なる分割の結果を導き出す事も可能です。
また、遺言の書き直しをしますと、後の遺言(お亡くなりになった時点に近いモノ)の効力が先の遺言に優先します
(民法第1022条及び1023条第1項)し、被相続人が生前に、遺言と異なる財産の処分(売却など)をした場合には、
「遺言」は取り消し(法講学上は「撤回」と呼ぶそうです。)たものとして取り扱われます(民法第1023条第2項)。
そこで、トラブルになりそうなことが、ほぼ確実であるような場合で、被相続人の財産が不動産であるようなケースでは、
「死因贈与」という方法をとることが考えられます。
"死因贈与"とは『「私が死んだ時には、あなたにこれこれの財産をあげます(贈与します)よ。」という、生きているウチの契約』のことです(民法第554条)。
以下、手続のご説明をします。
まずは、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)とのあいだでよく話し合い、死因贈与契約をすることにつき、双方の合意を形成します。
その後、必要書類をそろえます。
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◇死因贈与公正証書作成及び始期付所有権移転仮登記
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必要書類等一覧
・当該物件の登記簿謄本 各1通
・固定資産税評価証明書 各2通
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・住民票(不動産の登記簿上の住所とつながらなければ、
戸籍の附票も必要となります。)
(・権利証)
・印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの) 2通
・実印(契約書や委任状に押して頂きます。)
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・住民票 2通
・印鑑証明書 1通
・実印
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その上で2人そろって公証役場へ出向き(出向くことが困難であれば、公証人さんに出張してもらって)、次のような契約を締結(結ぶ)し、公正証書にしてもらいます。
第3条の「仮登記」とは、下記のように不動産の登記簿にされるものです。
第4条と第5条は、贈与者がお亡くなりになったときに、第3条の仮登記を本登記にする(権利を確実なものとする)作業を円滑に行うために、定めておきます。すなわち、執行者(受贈者)が単独で本登記ができるように定めておくのです。
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死因贈与契約書 |
贈与者 (以下甲という)と受贈者 (以下乙という)
との間で、下記のとおり贈与契約を締結した。
第1条 甲はその所有する下記の土地を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
(物件の表示)
所在 ○市○町字○
地番 1234番5
地目 宅地
地積 ○○○・○○u
第2条 本贈与契約は、甲の死亡と同時に効力を発生する。
第3条 両当事者は、本件土地について、乙のために始期付所有権移転仮登記をする
ものとする。
甲は、乙が上記仮登記手続を申請することを承諾した。
第4条 甲は本契約締結とともに、上記不動産の所有権の登記済権利証を乙に引き渡す。
甲はそれを承諾した。
第5条 甲は、本契約の執行者として、次の者を指定する。
住 所
氏 名 (乙)
生年月日
以上のとおり、上記契約が成立したことを証するため、本書2通を作成し、甲乙記名
押印の上、各1通を保有する。
平成 年 月 日
贈与者(甲)
受贈者(乙)
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契約が終わりましたら、法務局の不動産の登記簿に始期付所有権移転仮登記をします。
結果、以下のようになります。
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この公正証書による契約と、仮登記は『セットもの』です。どちらか片方では、効力が激減してしまうものです。
- 公正証書のみ作成した場合・・・・・・・・効力は遺言の場合と、さほど変わりません。
| 登記が実体に合っていないものとなり、仮登記を |
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本登記にする(権利を確実にする)ことができなくなる可能性が高くなります。
訴訟になった場合においても、勝訴することは至難の業です。
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贈与者がお亡くなりになった時に、受贈者はひとりで(単独で)、仮登記を本登記にする ことによって、自分に名義を変えることができます。
このように『死因贈与』の手続をとることによって、以下のようなメリットがあります。
- 仮登記には順位を保全する効果がありますので、生前の処分であるとか、
相続発生後の法定相続分の相続登記(この登記は相続人の1人からでもすることができるとされているので、
相続人の中にシャープSHARP(利に聡い)な人がいると、誰にも相談することなくされてしまうこともあります。)
などに、対抗できることになります。
- 推定相続人(まさに今現在仮にそのかたがお亡くなりになった時に、
第1順位で相続人になるかたがた)以外のかたと、契約しても構いません。
推定相続人に「財産の一部」をあきらめさせるという点においては、利用価値は大いにあるでしょう。
- 契約を結ぶことから「贈与」の一種ですが、その効力の発生時期に着目して、相続税の課税対象となります。
(この部分は、ある税理士の監修(添削)を仰ぎました。)
『死因贈与』はこのようにかなり強力なものですが、メリットばかりではありません。強力なだけに、使える裏技・ウルトラCに見えますが、両刃の剣ともいえるものです。
登記簿に記載されるということは、いつ誰が閲覧してもおかしくない状況になるわけです(そうそう一般のかたが、
登記簿を閲覧したりしないとは思いますが・・・・。)から、それぞれの推定相続人に、法定分に近い形で均等に契約するわけではないとすると、
ある時その事実に気がついた(取り分の少ない、あるいは全くない)推定相続人は、オモシロクないでしょう。
「えこひいきだ!」と言われ、生前から(生きているウチから)反撃されるかもしれませんね。そんなことに、
ビクビクしながら生活するのは"損"なことでしょう。ですから、ある程度の「決心・覚悟」あるいは「割り切り・あきらめ」
もしくは「使用しなければならないような状況・環境」が必要となってくるわけなのでございます。
ちなみに、仮登記の本登記をする際には、田や畑などの農地については、特定遺贈と同じく、農地法の許可が必要となることが、原則です。
『死因贈与』は劇薬ですので、使用上の用法・用量を守って正しくお使い下さい。
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| by Dr.コバ |
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